dw821memories’s blog

映画の感想などを書いていく予定です

【映画感想】ウォータームーン

 監督・原案・主演、長渕剛。山寺の修行僧になった長渕が主人公でオープニングから主題歌『しょっぱい三日月の夜』が流れてる。曲が素晴らしい。最初から釘付けになる。当時の長渕剛=小川英二(とんぼ)でもあり、まさに小川英二がそのまま修行僧になっていて、最初から普通にタバコを吸っている。同じ寺で修行をしている弟分の荻原聖人が他の修行僧からいじめられているのを助けるシーンは殴る蹴る、長渕キック、頭を焼くなど小川英二そのものを見る事ができる。また、政府の監視者役の1人は菅田俊が出演していて、さすがに若く、現在の日本統一の丸神会会長の時とはかなり違う。最初は全く気が付かなかった。

 寺で修行していた長渕が本当の悟りを得るため?に老師から東京の街に行けと言われて下山する。東京の人混みをただ一人達観した表情で逆走する長渕は自信に漲っていて、当時の長渕の勢いを感じられた。

 東京で野宿する長渕がいきなりエアーガン戦闘愛好家連中(当時流行っていたのか?)にちょっかいをかけられて、さらに腹を刺されて死にそうになる。場面が切り替わった後、長渕は旅館で働く盲目の松坂慶子に助けられた事になっていて怪我も治った事になっていた。

 その後、街中で荻原聖人と再会して金を稼ぐ為(後に旅館代と分かる)にパチンコをする。パチンコ屋に「打止したら景品交換」と掲示があって時代を感じた。今はもう打ち止め制はないと思う。街に出てきた荻原聖人はやりたい事が見つかって修行を辞めて水商売の道に進むと言う。長渕が「今までありがとう」と言い被っていた帽子を投げ渡す。お互いに手を合わせてお辞儀をして去って行くシーンで『しょっぱい三日月の夜』のピアノ版が流れていて、出会いと別れの切なさを感じるとても素晴らしいシーンだった。

 政府の監視者から長渕を匿う為に松坂慶子が旅館に火を放つ。半分自暴自棄の松坂に対して長渕が「私があなたの目になる」と言って(メチャクチャ感動した)次の瞬間、二人の旅のシーンに入る。火事の場面からずっと『しょっぱい三日月の夜』が流れていて、特に二人が線路の上を手を繋いで歩くシーンはあまりにも素晴らしいので、この場面は繰り返して10回以上観た。

 松坂慶子は交通事故で失明していて、血の繋がっていない娘がいて(事故で死んでいなかった模様)、その子に会いに行こうとする理由や状況がいまいちよく分からないが、美しいコスモス畑や長渕の音楽が重なって見事に場面を繋いでいた。

 後半、長渕が政府の追跡者に捕まって解剖されかける。「俺の目を松坂慶子に、願いはそれだけ」と手を合わせるシーンは最高。しかしその願いが叶わないと察すると、立ち上がって暴れまくり、科学者や菅田俊をいきなり捻り殺して、ビックリする。

 駆けつけた老師に哀しみをぶちまけた後、場面が急に切り替わって山頂の修行シーンに突入し、また場面が切り替わって松坂慶子が駆けつけて死にそうな長渕を抱きしめた後、長渕は超能力を発揮して松坂の目を治す。このシーンにも『しょっぱい三日月の夜』のオーケストラ版が流れていて、とにかく感動した。

 実は長渕が血液交換が必要な宇宙人で、それを監視する政府関係者が彼を追跡するという構成が浮きまくっているのは分かるが、その浮いた感じも独特な雰囲気があって(古めかしい山寺が出てきたと思ったら未来的な研究室が出てくる)思いのほか印象に残る場面が多くて、味のある映画だった。場面が急に切り替わるシーンや意味不明なシーンも、長渕の歌が流れてくると自然と受け入れられる。長渕最高。この映画の評価が低いみたいだが、僕には全く理解できない。シーンと歌や曲の調和が素晴らしく、令和の今に再評価されるべき。当たり前の男=長渕剛