dw821memories’s blog

映画の感想などを書いていく予定です

【映画感想】オルゴール

 みんな若い!長渕剛哀川翔が若すぎる。長渕の歌声も今聴くとまだ声が透き通っていて若さを感じる。ヤクザ映画だけど彼らが具体的にどんな組織にいて、どんな立場にいて、何をして命を狙われているかなどは殆ど描かれていない。ただ一匹狼風のヤクザの勇次(長渕剛)と弟分の翔(哀川翔)が一緒に行動していて、翔と結婚を控えている勇次の妹のきよ(仙道敦子)との家族パートが中心に物語が進む。最近あまり見かけなくなった日めくりカレンダーで「あと何日で結婚」と出てきて、この日まで純潔を貫く二人。この家族パートがしっかりと描かれているから後半の素晴らしい展開が活きてくる。

 別れた元妻と暮らす勇次の子供と会うシーンも描かれているのだが、ここがちょっと浅い。子育てがいい加減と喚き、いきなり元妻を殴り倒すシーンはとても良い。勇次の行き当たりばったりの凶暴性が見える。しかし子供と触れ合う場面はただ優しさのみが描かれていて深みに欠ける。幼稚園の前で組員が集団で着ぐるみを着て園児にぬいぐるみを配ってるシーンは優しさを表現しているけど、よく考えると色々問題が起きかねない場面である。そこから勇次がジープに乗って現れて子供と一緒に砂浜を走る。美しいシーンだがそこに至る子供との物語に深みが欠けると思った。

 ラスト20分ぐらいで一気にこの映画が輝き出す。しっかりと家族パートを描き「溜め」を作ってある分、それが突然破壊されると衝撃も大きくなる。大きな喪失から次の瞬間場面が切り替わり、勇次がもう事務所に乗り込んでいる。さらに他人の結婚式に白昼堂々、日本刀を持って速歩きで突入していく場面は素晴らしい。披露宴会場の机の上を食器をブチ蹴りながら歩く勇次。奴を殺す為なら他人も自分もどうでもいい。突入シーンでは『激愛』のバックミュージックがピタリと止まり、長渕の素晴らしいカチコミが実際に行われているみたいだ。長渕の演技も凄みがあるし、監督の黒土も最高。素晴らしいシーンだった為、巻き戻して繰り返し何回も観た。

 ラストで勇次が手錠をかけられたまま子供に駆け寄るシーンはスローモーションになって、警官に撃たれるかどうかヒヤヒヤするけど、あのシーンは『とんぼ』の最終回みたいに撃たれて終わっても良かったかもしれない。子供とのシーンがどうしても軽く感じる。それから題名の「オルゴール」が殆ど物語に関係がない(オルゴールからは激愛のオルゴール版が流れてくる)。冒頭の雪国の場面が何のシーンかよく分からなかった。それでも最近観た映画の中では最大級に面白い。長渕キックも沢山出てくるし、レストラン前で立っションしたり、長渕好き映画好きには絶対お薦めの一本だ。