dw821memories’s blog

映画の感想などを書いていく予定です

【映画感想】タクシードライバー

 この映画を観ようと思ったきっかけの一つに、実は僕自身が半年ほどタクシードライバーをやった事があるからだ。物語の中で主人公(ロバートデニーロ)がタクシーを始めようとした理由は不眠症の為と言っているが、僕も夜の寝付きが悪い事が多く、深夜まで仕事をするタクシーに偶々ちょうどいいと感じた部分もある。タクシー会社は受け皿が広いというのは紛れもない事実であり、就労のセーフティーネットという側面もあると思う。タクシー業務についてはまた別の記事で書くかもしれない。

 この映画の大筋は孤独のタクシードライバーの主人公が徐々に精神を病んでいき、最後は売春宿で暴れて殺人をするが、結果的に少女を助けた事になっていて罪にも問われずに少しだけ街の正義のヒーローになるというもの。しかし分からない部分というか唐突すぎる部分がいくつかあって、この映画が『ジョーカー』と似ていると言われている理由がよくわかった。

 一番唐突だと思ったシーンはいきなり選挙事務所に押し入って、そこに勤めている女性にデートを誘う場面。冒頭の映画館の受付の女性を誘った時には全く相手にされないのに、高嶺の花のような女性には何故かうまくいく。普通だったら驚いたり相手にされなかったりするのに、女性側も何故か乗り気。このシーンを観た時「これは妄想の場面では」と思った。その後のデートでもポルノ映画を観させて激怒させたり、まるで現実と妄想が入り混じったような普通ではありえないような展開が続く。さらに自分のタクシーに女性が支援している次期大統領候補の議員がいきなり乗り込んでくるのも不自然に感じた。後半の売春をさせられている少女と、シーンが切り替わった後ですぐに会って話しているのも不自然に思えた。これらのシーンは主人公が「こうなったらいいな」という単なる妄想ではないかと思えてくる。

 一連の唐突の不自然なシーンは『ジョーカー』では明らかに視聴者側に妄想と説明する場面があるが、この映画にはそれがない。僕が思うに、製作側もそれを想定していなかったと思う。唐突に思えるシーンは実際に起こった出来事として作ってある。出来上がった作品が夜の場面が多く唐突でボンヤリとしていて、たまたま視聴者に妄想と思わせるようなシーンになったと思われる。もしこれが計算で作られていたとするなら、凄いな。ちなみに妄想っぽいラストシーンの主人公の首にはよく見るとちゃんと事件で撃たれた傷跡があった。

 「タクシードライバー」という一つの職業を題名にしていて内容も暴力的で暗いので余計な誤解や偏見を招くかもしれない。今作の主人公はたまたまタクシードライバーになっただけで、仮に別の職業でもこの作品の中核は描けたと思う。タクシー運転手を専門的に描いた映画ではない。最後の方で主人公がモヒカンになった時に「完全にイカれたか」と感じさせる!ジョーカーやタクシードライバーの主人公のように決して自暴自棄にならないようにしたい。