dw821memories’s blog

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【映画感想】THE FIRST SLAM DUNK

 原作のラストからどうやってストーリーを繋げてくるのか、どういう作りなのか、そこを一番楽しみにしていた。どんな内容なのかは全く調べずに出来るだけ早く観に行きたかった。全くバスケには興味はないけどスラムダンクだけは好きなのは俺だけじゃないはず!

 何らかのストーリーの続きを期待していたがそうではなく、原作の山王戦をアニメ化して宮城リョータの過去を織り交ぜた内容で、完全新作というよりリメイクに極めて近い。キャラクターの動きが実写の人の動きを取り入れたようなロコスコープ風の作りで、TVアニメ版と全く質感が違う。原作の絵がそのままリアルに動き出しているような雰囲気がある。人間のような動きで漫画のようにデフォルメされた感じがなく、好みが分かれるかもしれない。僕はリアルな雰囲気が好きな方だ。

 やはりどうしても山王戦の結末は知っているので、「次に何が起きるんだろうか」という期待感が薄い。試合と交互に挿入される宮城リョータの過去がシリアスな話で、山王戦特有の熱感が途切れ途切れになってしまっているような感じもある。率直に思ったのは、回想シーンは原作の主人公桜木花道のものではなく脇役の宮城リョータになっているのも少し違和感があった。その為、桜木花道の存在感がとても弱く感じた。主人公はどう考えても桜木しかない。脇役の宮城のパートから山王戦を行ったり来たりするので主人公がブレてしまって感情移入がしずらい。山王戦に戻った時にはどうしても宮城リョータは主人公になりきれない。特に山王戦は最も桜木の活躍が目立つ試合で、例えばこれが翔陽戦で三井を主人公にしたならば違和感はなかったかもしれない。普通に桜木花道の何らかの回想を織り交ぜた方が良かったかもしれない。

 一番テンションが上がったのは後半終了間際、主題歌が流れながら両チームのメンバーがコートに戻っていく場面。クライマックスをバリバリの音楽で盛り上げる!!勿論、映画館は音響が素晴らしく、大音量なのにとても心地良い。これは原作だけでは決して味わえない、アニメ化だからこそ味わえる感覚だ。

 今作品はどちらかと言うとファン向け、原作を知った上でこそ楽しめると思う。山王戦は確かに最終章で盛り上がるけど、スラムダンクの良さの一部でしかない。物語全体では山王戦は起承転結の結で、初めから結を観てもたぶん面白くないというか、深みが全くないだろう。紆余曲折があってついに山王戦まで漕ぎ着けた湘北メンバーの物語がある。もし映画版だけを観たなら絶対に原作も読んで欲しいと思う。ちなみに僕が一番好きな場面は陵南戦で木暮がスリーポイントを決めて回想シーンに切り替わる下り。思い出すだけで泣けてくる。作者がスラムダンクで表現したい事、言いたい事があのシーンに詰まっているような気がする。 

 題名の『THE FIRST SLAM DUNK』の意味がちょっとよくわからなかったが、単純にセカンドもあるのだろうか。やはり山王戦のその後を観てみたいが、あの続きを作るのはもうとても難しそう。普通の大人になった彼らを描いても興醒めするだろうし。ちなみに今作のエンドロール後にワンシーンがあるのでしっかり最後まで観る事を勧めておく。