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映画の感想などを書いていく予定です

【映画感想】きな子〜見習い警察犬の物語〜

 犬が好きだから借りてきた。実在した「きな子」というズッコケ犬の事は全く知らなかった。見習い警察犬の話というより見習い訓練士に焦点を当てている。親父に憧れて警察犬訓練士を目指す杏子が物語の中心。きな子という実在した犬は訓練披露中にジャンプに失敗した事で有名になり、地元のマスコット犬のように当時話題になったらしい。この映画が製作された時にはまだ警察犬の試験に合格していなかったらしく、物語も試験の途中で終わる。この映画が公開された後できな子は本当に警察犬になったらしい。きな子のストーリーは現在進行形で作られていて、これからを応援する意味合いもあった。

 この映画はきな子よりも杏子にスポットが当てられていて色々考えさせられた。警察犬訓練所の見習いとして朝5時から働き、寝るのは夜中の12時。きな子の訓練の時間を作る為に朝3時に起床するなど一生懸命に仕事に取り組む。見習いとして1年が過ぎた後、きな子がズッコケ犬として有名になる中、警察犬試験日を迎える。しかし試験は落ちて、さらにきな子の体調管理を見落とした事を所長に怒られて胸ぐら掴まれてパワハラ一歩手前の叱られ方をする。所長はいつも仁王立ちをしていて教え方は下手だが思いやりはある人物設定である(先輩訓練士ワタルのうどん屋を思いやる所長の行動は感動的)。

 この出来事がきっかけで今まで真面目に仕事に取り組んできた杏子がいきなり仕事を辞めてしまう。この場面が強く印象に残った。真面目だからこそ気にし過ぎて一気にプツンとなってしまう気持ちはよく分かる。若いと繊細だから尚更気にし過ぎるかもしれない。もっといい加減だと逆にヘッチャラで気にもせず仕事も辞めない。真面目なタイプはこんな感じで辞めてしまうパターンが多いかもしれない。こういう時はとにかく頑張り抜くしかない。周りも暖かく接してくれて理不尽な事もないなら頑張って頑張って頑張り抜くしかない。

 この映画の中では辞めた後で所長や娘が迎えに来てくれたりして気持ちを取り戻すが現実はそうとも限らない。あのまま引きこもり状態に突入する事はあり得る。さらに辞めたい理由が理不尽、ずるい人(例えば犬の世話を普段一切やらせておいて試験本番だけ出てくる人)、体力がもたないなど、本当に辞めなければならない状況もあるかもしれない。逃げた方がいい事もあるだろうから頑張れと安易に言えないが、この映画の杏子の場合はもっと頑張るべきパターンである。

 最近、頑張れという言葉を使うと逆に追い詰めるから避けた方がいいという風潮があるが、そんな中でも特に若い人、真面目な人が頑張り抜く事を応援してくれる映画だと思った。