dw821memories’s blog

映画の感想などを書いていく予定です

【映画感想】血と骨

 ビートたけし(金俊平)の凄まじい存在感が光り、ストーリーのテンポもとても良く引き込まれた。昭和の下町のセットも大掛かりに作ってあって、豚の解体シーンやその肉にウジ虫が湧いてきたり、少し気持ち悪い場面も見応えがあった。2時間半が早く感じた。

 若い頃には好青年風だった金俊平がなぜあんなに凶暴になったのかは映画の中で理由は語られない。ただひたすら短気で暴れ抜くビートたけしが素晴らしい。台詞の言い回しも面白くて「〜けつかる」「捻り潰す」「勝手に死にやがれ」「働くぇえ」など味がある。金俊平は非常に短期で暴力的だが商才に長けて愛人も次から次に作ってエネルギーがある。行き当たりばったりでカマボコ工場を始めたら上手くいって、そこで稼いだ金を元に金貸しも始めたらそれも上手くいく。残業代を払わない事に文句を言った従業員に焼け石を顔にぶちかましたり、借金の取り立てに乗り込んで急須を口で噛み砕いてドスをかました後、自殺に追い込もうが関係なし。そして自分は2人目の愛人と四人も子供を作るなど、凄まじい勢いがある。ある意味、金俊平の生き方は男の理想にも思えた。

 喧嘩のシーンではそこらじゅうの物をぶち壊していくが特に、ガラス格子引き戸に親子でぶち当たって粉々に破壊するシーンが最高に面白かった。この割れたガラス格子がいい味を出していて、その割れた部分や透明な格子から人物がいる部屋を映すシーンが多々あって、それが絶妙な緊張感というか、またそれを再びぶち壊してしまうような緊迫感が常にあった。この映画にいつも映し出される「ガラス格子引き戸」がピリピリしたムードをより一層に引き立たせてくれた。

 娘の花子が自殺してしまう衝撃的なシーンの後、葬式に金俊平が道具を持って現れて次に何が起きるのか緊張感は高まるが、乱闘騒ぎになって集まった親戚同士、敵味方関係なく殴り合いが始まる。金俊平が誰彼問わず木刀で殴るシーンはコミカルチックな雰囲気すらあり、娘の自殺という悲壮感から、馬鹿は死ななきゃ治らないというドタバタ劇が始まる構成はとてもユーモアを感じた。そしてその場で脳出血で倒れる金俊平。その辺りから凶暴性は薄れ、ビートたけしが普段のお笑いで見せるビートたけしみたいになっていく。

 死にそうで死なない金俊平、結局最後まで生き延びる。ビートたけし以外の他の出演者もみんないい味を出していて、たけしファンはもちろん、映画好きには絶対にお勧めの作品だ。